『資金繰り表作成&活用マニュアル』

年商1~10億円規模の中小企業の経営者にとって、資金調達のパートナーである「信用金庫」がどのような基準で自社を評価しているのかは、常に気になるトピックです。

決算書の数字が良いに越したことはありませんが、実は信用金庫は「数字に表れない部分(非財務情報)」を非常に重視しています。

本記事では、実際に筆者が参加した信用金庫の勉強会資料に基づき、彼らが「目利き」としてどこを見ているのか、そして経営者が意識すべき「健全な会社経営のポイント」を徹底解説します。


1.信用金庫が重視する「目利きの視点」とは?

信用金庫の最大の強みは、地域に密着した「Face to Face(対面)」の対応です。

メガバンクがスコアリング(数値評価)を重視するのに対し、信用金庫は「対話」と「訪問」を通じて、会社の将来性や持続可能性を判断します。

資料によると、視点は大きく分けて以下の2つのカテゴリーに分類されます。

  1. 訪問・対話による視点(社長・役員、従業員の人間性や組織の活気)
  2. 財務・事業的な視点(事業内容、資金繰り、その他外部資料)

これらを通じて、「会社の取り組みと、なりたい会社像(ビジョン)が一致しているか」を総合的に判断しているのです。


2.【視点①】社長・役員の資質と経営ビジョン

会社の方向性を決めるトップ層の状態は、信用金庫が最も注視するポイントです。

理念とビジョンの浸透

「地域企業としての理念があるか」
「将来の企業像を具体的にイメージした取り組みをしているか」
という点は、長期的な融資を行う上での判断材料となります。

警戒される「具体的ポイント」

以下の項目に当てはまる場合、信用金庫は「経営の安定性に欠ける」と判断するリスクがあります。

  • 実権者の不透明性: 代表者以外に実権者が存在する(裏のオーナーなど)。
  • 後継者不在: 事業承継の計画が立っていない。
  • 公私の混同: 代表者への不明瞭な貸付金(役員貸付)がある、華美な生活をしている。
  • ガバナンスの欠如: 役員の頻繁な入れ替わり、連絡の取りにくさ。

3.【視点②】従業員と現場の雰囲気

「企業は人なり」という言葉通り、従業員の様子は経営状態を映す鏡です。

社内の風通しと活気

資料では、
「会社や社長の思いが従業員に共有されているか」
「従業員はいきいきしているか」

が重要な視点として挙げられています。

現場でチェックされる5つのポイント

信用金庫の担当者が訪問時にこっそりチェックしている項目は以下の通りです。

  1. 経理担当者の変更: 頻繁に変わる場合は、内部トラブルや経営難のサイン。
  2. 整理整頓: 事務所や工場が乱れている会社は、管理体制が甘いと見なされます。
  3. 教育: 身だしなみや挨拶が徹底されているか。
  4. 計数把握: 経理担当者が自社の数字を把握できているか。
  5. 給与遅延: 支払いの遅れは、最も深刻な倒産リスクの予兆です。

4.財務状況・事業内容からわかる「経営の健全性」

決算書の数字の裏側にある「実態」をどう評価するか。ここでは3つのカテゴリに分けて解説します。

① 事業内容のチェック

  • 依存度: 販売先が特定の1社に集中しすぎていないか。
  • 設備: 設備が老朽化し、更新投資ができていない(将来性が低い)。
  • 本業への集中: 本業以外の営業目的が多い(多角化の失敗リスク)。

② 財務・資金繰りのチェック

ここでのポイントは、「不透明な動き」と「管理能力」です。

  • 焦げ付き: 取引先の倒産リスクを把握できているか。
  • 在庫過多: 売れない在庫(不良在庫)を抱えていないか。
  • 試算表の作成スピード: 定期的に試算表を作成していない会社は、経営判断が遅いと見なされます。
  • 金融機関との関係: メインバンクの頻繁な変更や、規模に見合わない多数の銀行取引は不信感に繋がります。

③ その他資料からわかるリスク

  • 不動産の履歴: 本店所在地を頻繁に移転している、または過去に差押え等の履歴がある。
  • 担保設定: 担保設定者が頻繁に変わる、不審な名義がある。
  • 評判: 同業者間での悪い噂(信用の低下)。

5.中小企業が「信頼される会社」になるための3ステップ

信用金庫から「ぜひ融資したい」と思われる会社になるためには、以下のステップを意識しましょう。

ステップ1:情報の透明性を高める

役員貸付金や不明瞭な仮払金を整理し、クリーンな決算書を目指します。また、試算表は毎月決まった時期に提出できる体制を整えましょう。

ステップ2:5S(整理・整頓・清掃・作法・しつけ)の徹底

現場の乱れは経営の乱れです。担当者がいつ訪問しても良いように、事務所や工場の美化と従業員の教育を徹底します。これは生産性向上にも直結します。

ステップ3:経営ビジョンの言語化

「自分たちが地域でどのような役割を果たしたいのか」を言語化し、従業員と共有します。社長が熱意を持って将来を語れることは、融資担当者の心を動かす大きな要因になります。


6.まとめ

信用金庫の視点は、単なる「貸し倒れを防ぐためのチェック」ではありません。「この会社と一緒に成長していけるか」を見極めるためのプロセスです。

「財務状況(数字)」を磨くと同時に、「社長の想い」「従業員の活気」「現場の規律」といった「非財務情報」を磨くこと。

これこそが、激動の時代において中小企業が生き残り、地域社会に貢献し続けるための秘訣と言えるでしょう。


貴社の経営状態を「信用金庫の視点」で一度セルフチェックしてみませんか? もし、今回のチェックポイントで不安な点があれば、まずは経理体制の見直しや、現場の整理整頓から始めてみることをお勧めします。