『資金繰り表作成&活用マニュアル』

「一生懸命働いているのに、なぜか資金繰りが苦しい……」

その原因は自社内ではなく、外の世界の変化にあるかもしれません。特に1億〜10億円規模の企業は、経営の外部環境の変化に大きく影響を受けることになります。

地政学リスクによる、原材料の高騰
政治的な影響(与党の方針の変更)による、税制の変化
天候不順、災害など、突発的な影響
などなど…

皆さんの会社は、これらの外部環境の変化に対応できるだけの計画、リソース、資金繰りは準備は完璧にできている、と言えますでしょうか?

本記事では、経営戦略の要となる「外部環境分析」について、特に1億〜10億円規模の企業が取り組むべき「PESTLE分析」の枠組みを用い、財務視点から分かりやすく解説します。

1.なぜ今、中小企業に「外部環境分析」が必要なのか

  • 経営戦略は「外」から決まる
    企業活動は社会経済環境の影響を不可避的に受けます 。自社の方向性を決めるには、外部の状況と変化の分析が必須です 。
  • VUCA時代の生存戦略
    変動性・不確実性が高い現代(VUCA)では、柔軟な経営戦略がなければ事業存続が危ぶまれます 。
  • 資金繰りへの直結
    例えば、円安(経済的要因)や最低賃金の上昇(法律的要因)を予見できなければ、気づかぬうちに利益が削られ、キャッシュが底を突くリスクがあります。

2.PESTよりも深い「PESTLE分析」の6つの視点

従来のPESTに「法律(L)」と「環境(E)」を加えたPESTLE分析は、より緻密な戦略立案を可能にします

  1. 政治的要因 (Politics):与党方針、補助金・助成金の予算化など 。
  2. 経済的要因 (Economy):為替、金利、インフレ、原油価格。これらは原材料費や支払利息に直結します 。
  3. 社会的要因 (Society):少子高齢化、消費者の価値観変化、働き方の変容 。
  4. 技術的要因 (Technology):AI、DX、技術の陳腐化。これを見誤ると設備投資が「死に金」になります 。
  5. 法律的要因 (Legal):法改正、規制緩和、最低賃金。特にコンプライアンス対応はコスト増要因です 。
  6. 環境的要因 (Environment):異常気象、脱炭素の流れ。自然災害による在庫損害や、供給網の寸断リスクを含みます 。

※ 共著『SWOT、PESTLE&財務分析による 真実の経営計画書』より図を抜粋しております

3.【事例】財務コンサルタントが見た「外部環境の読み違え」

  • 事例A(製造業・年商5億)
    原材料の輸入価格高騰(経済的要因)を「一時的なもの」と楽観視し、価格転嫁を遅らせた結果、1年でキャッシュが3,000万円減少したケース。
  • 事例B(サービス業・年商2億)
    最低賃金の引き上げ(法律的要因)を見越さず多店舗展開を進め、人件費率が急騰。利益率が2%を切り、銀行融資の審査に支障が出たケース。
  • 考察
    これらは「事実(データ)」に基づかず「希望的観測」で動いた結果です。PESTLE分析は、経営者の主観や感情を排除するために行います 。

4.明日から使える「外部環境分析」5ステップ

  1. 目的の確認:何のために分析するか、メンバーで意識を合わせます 。
  2. キーワード出し(ブレインストーミング):質より量を重視し、付箋等を使って要素を列挙します 。
  3. プラス・マイナスの検討:各要素を「機会(チャンス)」と「脅威(リスク)」に分類します 。
  4. 事実と意見の切り分け:公的な統計データ(人口動態、物価指数等)を使い、根拠を強めます 。
  5. 経営計画への反映:分析結果を基に、具体的なアクションプランに落とし込みます 。