『資金繰り表作成&活用マニュアル』

SNSは経営の「信用力」を担保する資産の一つと考える

「社長、御社のInstagramは、銀行員に見せれますか?」

私が財務コンサルティングの現場でこう尋ねると、多くの経営者は驚かれます。

「銀行員がInstagramなんて見るのか?」と。 答えはイエスです。
もちろん、稟議書に「いいね数」を書くわけではありません。しかし、金融庁が推奨する「事業性評価(決算書以外の定性要因での評価)」の流れの中で、企業の採用力、組織の活性度、市場でのファンベースの厚さを測る指標として、Web上のプレゼンスは無視できない要素になりつつあるのです。

本記事では、単なるマーケティング論ではなく、「企業格付け」や「資金調達」に寄与する、経営戦略としてのInstagram運用について、実例を交えて解説します。
※基本的にホームページも同様のことが言えます


1.銀行員は見ている。「事業性評価」とInstagramの意外な関係

かつて銀行融資は「担保」と「保証」が全てでした。
しかし現在は、企業の将来性や本業の力を評価する「事業性評価」へとシフトしています。ここでInstagramがどう関わってくるのか、プロの視点で紐解きます。

決算書に見えない、企業へのエンゲージメントの可視化

決算書の数字が良いのに融資が伸び悩む企業と、赤字でも支援される企業。この差の一つに「将来の収益獲得能力」の証明があります。 フォロワー数そのものよりも、「投稿に対する熱量(エンゲージメント)」は、その企業がどれだけ顧客に愛されているか(LTVの高さ)の証明になります。これは、B/Sには載らない無形資産です。

「採用力」=「事業継続性」の証明

現在、中小企業の倒産理由の上位に「人手不足倒産」があります。
銀行員はここを非常に警戒しています。

  • 社員が生き生きと働いている様子が発信されている
  • 若手社員が顔出しで登場している これらは「リクルーティングに成功している」「離職率が低い(組織が健全である)」という強力な証拠となり、銀行のスコアリングにおける定性評価(経営管理体制など)にポジティブな心証を与えます。

2.【事例】Instagramが金融機関との交渉材料になった事例

※守秘義務の観点から、業種や地域、数値を一部変更・加工して紹介します。

事例A:地方製造業(金属加工)のケース

課題: 設備投資のための融資を申請したが、若手不足と業界の先細り感を理由に、銀行の反応が渋かった。

戦略的Instagram運用: 製品の「美しさ」と、職人の「技術力」にフォーカスしたアカウントを開設。「こんなマニアックな部品が、実はあの有名製品に使われている」というストーリーを展開した。

成果と金融機関の反応:

  • ニッチなファンがつき、海外からの問い合わせが増加(=新規販路開拓の能力証明)。
  • 投稿を見た工業高校生からの応募が増え、採用コストが前年比300万円ダウン(=販管費削減能力の証明)。
  • メインバンクへの報告: 経営計画書に、事業性評価の内容として「Instagram経由の採用実績と海外引き合い件数」を記載。「御社は地味だが、情報発信力があり、将来のリスクヘッジができている」と評価された。

事例B:美容室チェーンのケース

課題: 3店舗目の出店融資。既存店の売上は横ばいで、審査はギリギリのライン。

戦略的Instagram運用: スタイル写真だけでなく、「スタッフの練習風景」や「社内研修の様子」をショート動画(リール)で頻繁にアップ。店長のマネジメント哲学も発信した。

成果と金融機関の反応:

  • 銀行担当者が来店した際、「Instagramで見た通りの活気ですね」と評価。
  • 単なる「ハコ(店舗)」にお金を貸すのではなく、「人が育つ仕組み(組織)」にお金を貸すというロジックが成立。
  • 融資実行に繋がった(定性評価の向上による影響と推測)。

3.「格付け」を意識した運用戦略:やってはいけないこと、やるべきこと

銀行員や投資家が見たときに「マイナス評価」になる運用と、「プラス評価」になる運用の違いは明確です。

❌ やってはいけないNG運用

  • 更新が数ヶ月止まっている: 「管理能力がない」「継続性がない」「担当者が辞めた(組織崩壊)」とみなされます。Web上の廃墟は、リアルな工場のサビと同じです。
  • 炎上リスクのある過激な投稿: コンプライアンス意識の欠如は、信用リスクそのものです。
  • 品位のない「釣り」投稿: 過度な煽りや、ビジネスと無関係な私的な承認欲求の発露は、経営者の資質を疑われます。

⭕️ 銀行評価を上げる「IR的」Instagram運用法

  1. 「一貫性」を見せる
    プロフィール、ハイライト、投稿の世界観が統一されていることは、経営方針が一貫していることの表れと捉えられます。
  2. 「顧客の声」を可視化する
    自社の投稿だけでなく、顧客が自社製品を使って喜んでいる投稿(タグ付けやメンション)をストーリーズで紹介する。これは「売上が架空ではない」ことの裏付け資料になります。
  3. 「SDGs・地域貢献」の発信
    地域清掃やエコへの取り組みなど、CSR活動の発信は、地銀や信金などの地域金融機関に対して非常に有効なアピールになります。

4.運用体制の構築:これは「広報」ではなく「経営企画」である

ここまでお読みいただければ、Instagram運用を新入社員に丸投げしたり、安易な運用代行業者に依頼することのリスクがお分かりいただけると思います。
よく、安易に運用業者に依頼をして、100万円など高額なコンサルティング費用がかかったにも関わらず、フォロワー数が全く伸びない、何も成果に結びついてない、など失敗事例もよく聞きます。

経営者が関与すべきポイント

  • KPIの設定:
    「フォロワー数」ではなく、「採用エントリー数」「指名検索数」など、経営数字に直結する指標を追わせる。
  • トーン&マナーの承認:
    銀行に見せても恥ずかしくない「自社の品格」が保たれているか、最終チェックを行う。

専門家の活用

財務のプロとしてアドバイスするならば、マーケティングだけでなく「企業ブランディングとリスク管理」を理解しているパートナーと組むべきです。
投稿のデザインが綺麗かどうかだけでなく、「この投稿は外部ステークホルダー(銀行・株主・取引先)からどう見えるか?」という視点を持った運用が、貴社の企業価値を高めます。


5.よくある質問(FAQ)

Q. BtoB企業で、映える商品がないのですが?
A. 商品を見せる必要はありません。「技術へのこだわり」「社員の真剣な眼差し」「整理整頓された工場」など、企業の姿勢などを見せてください。銀行員は完成品よりも、そこに至るプロセスに企業の強みを見出します。

Q. 融資面談でInstagramの話をしてもいいのですか?
A. 積極的にすべきです。ただし「フォロワーが◯人います」だけでは弱いです。「Instagram経由で◯件の採用があり、採用コストを◯%削減できました」「新規顧客の◯割がSNS経由で、広告費をかけずに集客できています」と、財務インパクトに変換して伝えてください。

Q. 炎上が怖いです。
A. 運用ガイドラインの策定が必須です。誰が投稿し、誰が承認するのか。この「管理体制」を構築すること自体が、ガバナンスの強化につながります。


まとめ:Instagramは「デジタル時代の信用資産」

財務諸表には表れない企業の魅力や強み。
それを可視化し、蓄積できるのがInstagramというプラットフォームです。 「たかがSNS」と侮らず、資金調達や採用戦略の一環として、戦略的に取り組んでみてはいかがでしょうか。貴社の埋もれた価値が、正当に評価されるきっかけになるはずです。