『資金繰り表作成&活用マニュアル』

なぜ「繁盛店」の社長が夜も眠れなくなるのか

  • 「利益」と「現金」の決定的な乖離:
    損益計算書(PL)では黒字なのに、通帳の残高が足りない恐怖。
  • 1億〜10億円規模特有の悩み:
    店舗数拡大に伴う投資回収のズレ、本部経費の膨張、どんぶり勘定の限界。
  • 本記事の目的:
    財務コンサルタントの視点から、付け焼刃ではない「筋肉質な財務体質」を作る具体策を伝授。

しかし、飲食業は基本的に売上をキャッシュか、クレジットカード・キャッシュレス決済での回収となるので、他業種と比較すると回収の期間は短くなり、このことは資金繰りにとっては非常に好都合です。

1.【現場の真実】飲食業におけるキャッシュフローの構造的リスク

  • 売掛金と買掛金のタイムラグ:
    キャッシュレス決済比率の上昇(30%〜70%)による入金サイクルの長期化。
  • FLコストの変動耐性:
    原材料(Food)高騰と人件費(Labor)上昇が、ダイレクトに現金を奪うメカニズム。
  • 減価償却費という罠:
    多額の内装投資が利益を圧迫するが、実際の現金流出は既に終わっているという認識の整理。

2.資金繰りを可視化する究極の管理表「資金繰り表」

  • 日次・月次・年次の使い分け:
    • 日次資金繰り表: 毎日の現金過不足を確認し、支払いの優先順位を決める。
    • 月次資金繰り表: 3ヶ月~6か月先までの「資金の谷」を予測する。
  • 「資金繰り予定表」作成の3ステップ:
    1. 固定費(家賃・リース料)、銀行返済の確定。
    2. 変動費(仕入・人件費)を売上の一定比率で仮置きする。
    3. 消費税・源泉税などの「一時的だが多額の支出」をあらかじめ予約する。

3.【事例】1億〜10億円規模の企業が陥る「成長の罠」と克服策

  • ケースA(多店舗展開の失敗):
    新店投資が既存店のキャッシュを食いつぶし、本部の資金が枯渇。
    • 対策: 投資回収期間の厳格化と、不採算店舗の早期撤退基準(損切り)の策定。
  • ケースB(原材料高騰によるキャッシュアウト):
    利益率1〜2%の低下が、借入返済を不可能にする。
    • 対策: 棚卸資産(在庫)の圧縮と、即座の価格転嫁(メニュー改定)を断行する財務的根拠の提示。

4.資金繰りが苦しい時の「即効薬」と「根本治療」

  • 即効薬(短期的、守りの策):
    • 銀行交渉(リスケジュール):
      返済猶予を申し出るタイミングと、銀行が納得する「経営改善計画書」の作成がポイント。
    • 支払サイクルの変更:
      仕入先への支払い延長交渉ではなく、カード決済の締め日調整や入金サイクル短縮サービスの活用。
  • 根本治療(長期的、攻めの策):
    • ABC分析によるメニュー構成変更:
      利益率が高く、在庫回転率が良い商品への集中。
    • フリーキャッシュフローの最大化:
      営業キャッシュフロー(経常収支:本業の収支)をいかにプラスに維持し続けるか。

5.金融機関との「正しい付き合い方」と資金調達

  • 「雨の日に傘を貸してもらう」ために:
    試算表、資金繰り表を毎月10~20日までに提出し、透明性を高める。
  • 2026年最新の調達トレンド:
    コロナ融資返済開始に伴う「借換保証制度」の活用と、プロパー融資への切り替え戦略。

6.専門家FAQ

  • Q1:売上が上がっているのに現金が増えません。
    • A: 売掛金の入金遅れや、見えない在庫増、または借入金の元金返済額が減価償却費を上回っている(持ち出し状態)可能性があります。
  • Q2:リスケをすると次の融資が受けられなくなりますか?
    • A: はい、リスケ中は次の融資は受けられません。計画通りの業績回復を見せることで、再度「攻めの融資」を受けることは可能です。放置して延滞するのが最悪のシナリオです。
  • Q3:1億円規模の会社で、内部に財務担当を置くべきですか?
    • A: 専任は不要ですが、社長の右腕となる事務局長または外部のコンサルタントによる「月1回の財務会議」は必須です。