
【監修者プロフィール】
合同会社スタイルマネジメント 佐藤恵介
経済産業省 認定経営革新等支援機関
『資金繰り表作成&活用マニュアル』マネジメント社 2025年11月 共同著者
資金繰り改善、銀行対応(資金調達)、経営計画書作成、売上・利益改善などと支援する財務コンサルタント

『資金繰り表作成&活用マニュアル』
2025年11月 マネジメント社より共同出版
Amazonにて発売中
「決算書が赤字で、銀行からの追加融資が厳しい」
「コロナ融資の返済が始まり、手元の資金が減っていくのが怖い」
そんな経営者の皆様へ。
負債でありながら自己資本とみなされ、毎月の元本返済がゼロになる「資本性ローン」をご存知でしょうか?
一見、金利が高く使いづらい制度に見えますが、
実は「時間を金で買い、V字回復を狙う」ための最強の財務戦略です。
今回は、数多くの融資支援を行ってきた財務コンサルタントの視点から、制度の仕組み、審査を突破する事業計画書のポイント、そして実際の成功事例まで、現場のリアルな情報をお届けします。
資本性ローンの仕組みを3分で理解する
資本性ローン(正式名称例:挑戦支援資本強化特別貸付)は、主に日本政策金融公庫が提供する融資制度です。最大の特徴は、金融検査上「負債」ではなく「自己資本」とみなされる点にあります。
日本政策金融公庫 「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」
なぜ「資本」とみなされるのか?
通常の融資と異なり、万が一会社が倒産した場合の返済順位が「劣後(後回し)」に設定されているためです。
銀行から見れば、このローンは返済期間が長くその期間内は元本の返済がないため、「株主からの出資金」に近い性質を持ち、会社の財務体質が強化されたと評価されます。
最大のメリットは「期限一括返済」
通常の融資は翌月から元金+利息の返済が始まりますが、資本性ローンは5年〜20年の期間中、「利息のみ」を支払い、元金は最終回に一括で返済します。
これにより、借入期間中のキャッシュフロー(手元資金)が劇的に安定します。
【徹底比較】通常融資 vs 資本性ローン どっちが得か?
「でも、金利が高いんでしょう?」とよく聞かれます。
確かに資本性ローンは業績連動金利で、黒字化すると金利が上がります(例:3%台〜)。しかし、経営判断としては「総支払額」ではなく「キャッシュフロー」で比較すべきです。
シミュレーション条件: 5,000万円を期間10年で調達した場合
| 項目 | 通常融資(金利1.5%) | 資本性ローン(金利3.8%) |
| 毎年の返済額 | 約575万円(元金500万+利息) | 190万円(利息のみ) |
| 10年間の資金流出 | 毎年確実に資金が減る | 手元に毎年385万円多く残る |
| 総支払利息額 | 約390万円 | 約1,900万円 |
※金利は業績により変動しますが、ここでは高収益時の最大値を想定。
プロの視点:
B案(資本性ローン)は、A案に比べて約1,500万円多く利息を払うことになります。しかし、この10年間、手元には常に数千万円規模の「使える現金」が温存されます。
この資金を新規事業や設備投資に回し、1,500万円以上の利益を生み出せれば、高い金利は「成長のための必要経費(保険料)」として十分に元が取れるのです。
資本性ローンの活用事例【実録】
ここでは、実際に当事務所が支援し、資本性ローンを活用して危機を脱した中小企業の事例をご紹介します。(※守秘義務の観点から、一部の情報を加工しています)
事例①:コロナ禍・原材料高で赤字転落からのV字回復(卸売業)
企業概要: 年商約1.6億円(最盛期2億円)/従業員数10名以下
課題:
コロナ禍によるイベント中止で売上が減少する中、原材料価格の高騰が直撃。営業利益は▲300万円の赤字に転落しました。さらにコロナ融資の返済開始が迫り、手元の現預金は約2,000万円まで減少。資金ショートの恐怖と戦う日々でした。
支援内容と結果:
現状を包み隠さず開示した「真実の経営計画書」を策定し、金融機関と交渉を行いました。
- 日本政策金融公庫: 資本性劣後ローン 3,500万円(運転資金)決定
- メインバンク(信金): 協調融資として 500万円(追加融資)決定
その後の成果:
資本性ローンの導入により手元資金が潤沢になったことで、積極的な営業活動が可能になりました。結果、わずか1年で売上は1.8億円(対前年110%)へ回復し、営業利益も黒字化。現預金残高も約3,000万円まで積み増すことができました。
事例②:営業赤字でも攻めの設備投資を実現(製造業)
企業概要: 年商約38億円
課題:
前期実績は売上約38億円に対し、営業利益は▲8,849万円の巨額赤字。ただし、本業外収益により経常利益は黒字(8,526万円)を確保していました。通常であれば、営業赤字の状態での大型設備投資融資は極めて困難な局面です。
支援内容と結果:
赤字の原因が一過性であることと、設備投資による回収プランを明示した「根拠のある経営計画書」を作成。
- 日本政策金融公庫: 資本性劣後ローン 1.5億円 融資決定
プロの視点:
この事例のように、営業赤字であっても「経常利益が出ている」「明確な改善計画がある」場合は、億単位の調達も十分に可能です。重要なのは、赤字を隠すことではなく、「なぜ赤字なのか、どうやって黒字にするか」を論理的に説明できるかに尽きます。
審査通過率を上げる「経営計画書」3つの急所
資本性ローンの審査は、通常融資よりも格段に厳しく、期間も長くかかります(平均2〜3ヶ月)。審査官が見ているのは、担保や保証人ではなく「事業の将来性」だけです。
- 「実現可能性(蓋然性)」の高い数値計画「気合いで売上2倍にします」という計画書は通用しません。「どの顧客に」「何を」「どうやって売るか」というアクションプランまで落とし込み、売上根拠を積み上げる必要があります。事例①の卸売業でも、実態に基づいた「真実の経営計画書」が評価されました。
- 「みなし自己資本」による財務改善効果の明示資本性ローンを入れることで、自己資本比率がどう改善し、民間金融機関からの融資がどう受けやすくなるか(協調融資の呼び水効果)をシミュレーションして提示します。
- 定期モニタリングへの覚悟融資実行後、四半期ごとの試算表提出や業績報告が義務付けられます。これができない(経理体制が整っていない)会社は、計画の信憑性が低いとみなされ審査に落ちます。
資本性ローン実行までのポイント
経営計画書はもちろん大事です。
その他に、資本性ローンを実行させるための重要なポイントがあります。
それが、民間金融機関の同意です。
「民間金融機関からの融資がどう受けやすくなるか(協調融資の呼び水効果)」について上述しましたが、この融資は、資本性とすることで自己資本を改善する狙いがあるのですが、
公庫に資本性ローンを申し込む前に、
既存の民間金融期間に対し、「これから公庫に資本性ローンを申しむ予定ですが、その後に協調融資をしていただくことは可能でしょうか?」と聞いてもらい、
「はい、分かりました」と先方からの同意をもらっておいてください。
そうすることで、公庫側は、
「依頼のあった資本性ローンを実行できれば、民間金融機関からも融資を受けることができ、キャッシュフローが大幅に改善するな」と想定でき、審査の可能性を高めることにつながるからです。
まとめ:専門家と共に「攻めの財務」へ
資本性ローンは、赤字や債務超過であっても、起死回生のチャンスを掴める強力な武器です。しかし、その審査ハードルは高く、生半可な計画書では通りません。
「うちは借りられるだろうか?」
「銀行にどう説明すればいいかわからない」
そう迷われている経営者様は、ぜひ一度、認定支援機関や財務の専門家にご相談ください。事例にもある通り、「根拠のある計画書」さえあれば、会社の未来は資金面から大きく変えることができます。