『資金繰り表作成&活用マニュアル』

「黒字なのに現金がない」——その原因のひとつに「在庫」があります。

在庫コストの正体から、キャッシュフローを劇的に変える4つの財務指標、そして「流動・保留・廃棄」の3分類による改善ステップまで。
製造業・卸売業の中小企業が取り組むべき、在庫を「金」に変えるための財務戦略を詳説します。

1.在庫が増えれば、キャッシュが消える

なぜ、在庫管理が資金繰りに直結するのでしょうか。

それは、在庫が「形を変えた現金」であり、それが倉庫に眠っている間は一円の価値も生まないからです 。

10億円規模の企業において、在庫が1億円増えるということは、銀行から1億円多く借りるか、手元の現金を1億円減らすことを意味します 。在庫を減らせば、買掛金が減り、借入金が減り、結果として自己資本比率が向上します

また在庫管理を徹底することで、
資金繰りが良くなり、
粗利率が上昇します。

そもそもお金が足りなく理由は、以下の4つです。
①本業が赤字
②回収と支払いのサイトのズレがある
③売掛債権、在庫、固定資産の増加
④借入金の返済が大きい

そして、
在庫管理をすることで、貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)には、
以下のようなメリットがあります。

【貸借対照表(BS)へのメリット】

・流動資産:増加(仕入代金が不要となり、現預金が増える)
・棚卸資産:減少(不良在庫が減少する)
・固定資産:減少(倉庫、倉庫内設備が減少する)
・買掛金 :減少(仕入が少なくなる)
・借入金 :減少(仕入代金が少なくなる)
・自己資本比率:上昇(買掛金・借入金が減少するため) 

【損益計算書(PL)へのメリット】

・売上高 :増加(ビジネスモデルの見直しにつながる)
・売上原価:減少(不要な材料・商品の発注が減少する)
・販管費 :減少(物流コストが削減される)
・特別損失:減少(棚卸減耗損、廃棄費用が削減される)
・各利益 :増加(上記3要件を受けるため)

2.経営者が知るべき「在庫コスト」の5項目

在庫を抱えることには、単なる仕入代金以上の「見えないコスト」がかかっています

  1. 調達コスト: 発注や選別にかかる人件費 。
  2. 保管コスト: 倉庫代、保険料、水道光熱費 。
  3. 資本コスト: 在庫を買うための借入金の支払利息 。
  4. 維持コスト: 陳腐化、棚卸減耗損 。
  5. 廃棄コスト: 最終的な廃棄損 。

3.指標で管理する「在庫の健康診断」

勘や経験に頼らず、以下の財務指標(LaTeX形式)を毎月モニタリングしてください

  • 在庫回転率(回): 在庫が年間で何回入れ替わったか 。
    在庫回転率(回) = 売上高(または売上原価)/ 在庫金額
  • 在庫回転期間(月): 商品を全て売るのに何ヶ月かかるか
    在庫回転期間(月) = (棚卸資産 / 売上高(または売上原価))/ 12
  • GMROI: 在庫投資に対してどれだけの粗利を得たか 。
    GMROI = 売上総利益 / 在庫金額

4.具体的な改善:3分類とロジスティクスの刷新

在庫削減には、全社的なルール作りが必要です

  • 3分類の徹底:
    「流動在庫(動いている)」
    「保留在庫(判断待ち)」
    「廃棄在庫(動かない)」
    に分け、保留在庫には必ず廃棄期限を設けます 。
  • リードタイムの短縮:
    発注単位(ロット)の最小化や、納入頻度の見直しにより、社内に滞留する期間を物理的に短くします 。
  • 製造現場の改善:
    チョコ停の防止や段取時間の短縮など、製造リードタイムを縮めることが仕掛品在庫の圧縮に直結します 。

5.在庫管理は「営業」の問題でもある

在庫が多い原因は、現場の管理不足だけではありません。

「曖昧な販売計画」や「部品の共通化不足」といった、営業や設計の課題が倉庫に積み上がっているのです 。在庫を減らすプロセスは、社内の全部門の不効率を洗い出す、最強の経営改善プロジェクトとなります 。