
【監修者プロフィール】
合同会社スタイルマネジメント 佐藤恵介
経済産業省 認定経営革新等支援機関
『資金繰り表作成&活用マニュアル』マネジメント社 2025年11月 共同著者
資金繰り改善、銀行対応(資金調達)、経営計画書作成、売上・利益改善などと支援する財務コンサルタント

『資金繰り表作成&活用マニュアル』
2025年11月 マネジメント社より共同出版
Amazonにて発売中
経営者の「勘」を「確信」に変える財務の視点
年商1億円を超え、5億、10億と規模を拡大していく過程で、多くの社長が「現場の忙しさと、手元に残るお金が一致しない」という壁にぶつかります 。
事業をうまく運営するためには、日々の具体的な活動(仕入れ、雇用、集客)が、最終的にどのように「数字」として結実し、次の一手につながるのかを把握しなければなりません 。
本記事では、財務コンサルタント・資金繰りアドバイザーとしての知見を交え、事業活動と財務諸表の密接なつながりを解き明かします。
1.事業活動とは「価値の提供」と「おカネの循環」である
ビジネスの本質は、顧客に価値を提供し、その対価を得ることです 。例えば、あなたが念願のパン屋さんを開業したとしましょう 。
パン屋を運営するには、以下のような具体的な活動が必要です。
- 材料(小麦粉や酵母)を仕入れる
- スタッフを雇い、パンを焼く
- 店舗を構え、内装を整える
- チラシやSNSで広告宣伝を行う
これらの活動のすべてには「おカネ」が絡んでいます 。そして、事業に関わるあらゆる活動は、すべて「定量(数字)」で表現できるのです 。
2.事業の定量化:なぜ「儲かっているか?」が重要なのか
事業活動を数字に置き換える(定量化する)最大のメリットは、その事業が「本当に儲かっているか?」を客観的に判断できる点にあります 。
例えば、年間の活動を定量化してみると以下のようになります
| 活動内容 | 勘定科目 | 金額 |
| 商品を販売する | 売上高 | 1,000万円 |
| 商品を仕入れる | 売上原価 | 500万円 |
| 人を雇う | 給料 | 200万円 |
| 店を構える | 賃借料、地代家賃 | 100万円 |
| 店内を照らす | 水道光熱費 | 50万円 |
| 広告を出す | 広告宣伝費 | 100万円 |
| 合計 | 費用計 | 950万円 |
| 結果 | 利益 | 50万円 |
企業が持続的に成長・発展していくためには、この「利益」を出し続けなければなりません 。利益こそが、次なる投資への原動力となるからです。

利益の中から、次の仕入れや経費を使って、売上を上げていくことができます。元手を借入している場合は、利益の中から返済をしていくことになります。さらに利益の中から税金を払っていきます。
3.財務諸表(B/S・P/L・CF)の「つながり」を理解する
多くの経営者がPL(損益計算書)の利益だけを気にしますが、真の経営管理には「一連の事業活動の流れ」と、財務諸表の相互関係の理解が不可欠です 。
① 資金の調達と運用:貸借対照表(B/S)
事業を始めるには、まず「おカネを集める(資金調達)」必要があります。銀行からの借入(負債)や、自己資金(純資産)です 。 集めたおカネは、事業に必要な「経営資源(資産)」に姿を変えます。これが「資金の運用」です 。
② 価値の創造と結果:損益計算書(P/L)
揃えた経営資源を使い、顧客価値を作って提供し、対価を得ます 。その結果、「どれだけ利益が出たか」を示すのがP/Lです 。
③ 現実のおカネの動き:キャッシュフロー計算書(C/S)
「利益は出ているのに通帳におカネがない」という事態を防ぐのがCFです 。現金の増減(営業・投資・財務)を記録し、黒字倒産のリスクを回避します 。
売上を上げてどれだけおカネが増減したか(営業キャッシュフロー)、
事業に必要な経営資源を揃えるのにどれだけおカネが増減したか(投資キャッシュフロー)、
どれだけおカネを調達・返済したか(財務キャッシュフロー)
を表しています。
下記の図のように、
事業の流れに合わせて、BSとPL、CFはつながっていることが分かります。この流れを理解するようにしてください。

4.利益が「資産」を強くする:ストックとフローの循環
ここが最も重要なポイントです。
「稼いだ利益分だけ、純資産が増える」という構造を理解してください 。
P/L(フロー:行動と原因)で生み出された「当期純利益」は、B/S(ストック:結果)の「利益剰余金」として蓄積されます 。
※下図、赤枠の部分
厚くなった純資産は、さらなる「資金の調達余力」を生み、より大きな「経営資源(設備投資や人材)」を揃えることを可能にします 。
この「PDCAのサイクル」を回し続けることこそが、10億円企業への道筋となるのです 。

次回予告:【実践・改善編】
後半の記事では、より具体的に「利益を3割増やすにはどのレバーを動かせばいいのか?」という、収支改善の実践的な手法について、「P/Lブロック図」を用いて解説します。