『資金繰り表作成&活用マニュアル』

「コロナ融資の返済が始まり、毎月のキャッシュフローが厳しくなった」

「物価高騰で利益率が下がり、追加融資を受けたいが銀行の反応が鈍い」

私の元へ相談に来られる、年商数億円規模の経営者の多くが今、この悩みに直面しています。

これまで事業を牽引されてきた社長ならご存知の通り、資金繰りの詰まりは、黒字倒産を含めた最悪の事態を招きかねません。

そこで今、最も検討すべき手段が「経営改善サポート保証(通称:経営サポート保証)」です。

本記事では、数多くの事業再生・資金調達を支援してきた財務コンサルタントの視点から、制度の概要だけでなく、銀行や保証協会が審査でどこを見ているのかという「現場の本音」と、2025年3月から拡充された新制度のポイントについて詳しく解説します。


1.経営サポート保証(経営改善サポート保証)とは?

経営サポート保証とは、一言で言えば
「経営改善に取り組むことを条件に、借入金の返済条件を緩和したり、新たな資金を借りやすくしたりする制度」です。

経営サポート会議や中小企業再生支援協議会の支援を受けてつくった経営改善・再生計画にもとづいて、中小企業が事業再生に必要な資金を信用保証協会の保証付き融資として受けられる制度です。

経営サポート会議とは、経営改善計画や金融支援の合意形成を希望する中小企業が、既存の取引金融機関・保証協会などと一堂に会し情報共有・意見交換を行う場のことです。

中小企業庁
経営改善サポート保証(感染症対応型)制度について

資金繰りを劇的に変える「借換」と「据置期間」

この制度を利用する最大の目的は、キャッシュフロー(CF)の正常化です。

具体的には、既存の保証付き融資(コロナ融資など)をこの保証を使って
一本化(借換)し、返済期間を延ばすことで、毎月の返済額を軽くします。

  • 保証限度額: 最大2億8,000万円(別枠)
  • 保証期間: 最長15年
  • 据置期間: 最長5年(元金の支払いを止め、金利のみ支払う期間)

年商5億円規模の企業であれば、月々の返済額が300万円から100万円に減るようなケースも珍しくありません。この浮いたキャッシュを、次の事業投資や内部留保に回せるのが最大のメリットです。

リスケ(元本の返済をストップ)を検討している企業は、リスケするとその間は新規の融資は受けることができませんが、この経営サポート保証を使うことで、正常先のままとなり新規や追加の融資にも対応が可能となります。

【重要】2025年3月開始「経営改善・再生支援強化型」とは

2025年3月14日から、従来の制度に加え「経営改善・再生支援強化型」という新しい枠組みが開始されました。従来の制度よりも、さらに踏み込んだ支援が必要な企業向けに条件が強化されています。

項目一般形強化型(2025年新設)
対象経営サポート会議等の支援を受ける方再生計画の作成など、抜本的な再生に取り組む方
保証料率0.2~1.15%0.2%(一律で非常に低い)
据置期間最長5年最長5年(より柔軟な運用が期待される)
要件認定支援機関のサポートが必須認定支援機関+金融機関の合意形成がより重視

※制度の詳細は常に更新されるため、必ず最新の公募要領を確認するか、専門家へお問い合わせください。

中小企業庁
経営改善サポート保証(経営改善・再生支援強化型)について


2.審査の合否を分ける「経営改善計画書」作成の極意

この制度を利用するための絶対条件、それが「経営改善計画書」の策定です。

銀行員や保証協会の担当者は、この計画書を見て「この会社は本当に立ち直れるのか?」をジャッジします。

私が支援する際、必ずお伝えしている「審査に通る計画書」の鉄則は以下の3点です。

① 原因分析は「他責」より「自責・構造」で書く

NGな計画書の典型は、赤字の原因を全て「コロナのせい」「円安のせい」「原油高のせい」にすることです。外部環境はもちろん影響しますが、審査側が見たいのは「その環境下で、自社の何が弱かったから業績が悪化したのか」という分析です。

  • × NG例: 原材料費が高騰し、利益が圧迫されたため。
  • ○ OK例: 原材料費が高騰したが、価格転嫁の交渉が遅れたこと、および不採算となっていたC商品の製造ラインを維持し続けたことにより、利益率が5%低下した。

ここまで書き切ることで、「課題が明確なら、対策も打てるはずだ」と信頼を得られます。

② 数字の根拠は「積上げ式」で示す

V字回復の売上計画を作る際、「気合いで前年比110%」といった計画は通用しません。

  • どの取引先の、
  • どの商品のシェアを、
  • どのような営業活動で(訪問頻度や提案内容)、
  • いつまでにいくら増やすのか。

これらを因数分解して積み上げた数字が、計画書の売上目標と一致している必要があります。「絵に描いた餅」ではないことを証明するには、アクションプランの具体性が全てです。

③ 役員報酬の適正化とコスト削減の覚悟

これは経営者にとって耳の痛い話かもしれませんが、金融機関は「社長の本気度」を見ています。

会社が赤字で返済猶予を求めているのに、役員報酬が高額なままだと、心証は極めて悪くなります。もちろん生活に必要な額は維持すべきですが、「まずは役員報酬の一部を減額し、それを原資に借入返済へ充てる」といった姿勢を示すことで、審査の通過率は格段に上がります。


3.【事例】年商6億円・卸売業A社の改善事例

ここでは、守秘義務の観点から一部情報を加工していますが、実際に私が支援した事例に近いケースをご紹介します。制度利用のイメージとしてご覧ください。

【企業プロフィール】

  • 業種: 建築資材卸売業
  • 年商: 約6億円
  • 従業員: 25名
  • 状況: コロナ禍の工事延期と資材高騰で、2期連続赤字。コロナ融資の返済が月々400万円始まり、手元資金が半年で底をつく予測。

【実施した施策】

認定支援機関(私どもの事務所)と共に「経営改善計画書」を策定し、経営サポート保証を申請。

  1. 借換の実行: 複数の借入金(計1.5億円)を経営サポート保証で一本化。
  2. 条件変更: 返済期間を10年に設定し、**最初の3年間は元金返済なし(据置)**とした。
  3. アクションプラン:
    • 不採算エリアからの撤退(物流コスト削減)。
    • 粗利率の低い取引先への値上げ交渉(応じない場合は取引縮小)。
    • 在庫管理システム導入による過剰在庫の削減。

【結果】

  • CF改善効果: 月々の返済額 400万円 → 金利のみ(約20万円)へ減少。
  • 資金余力: 月380万円のキャッシュアウトが止まり、手元資金が安定。
  • 現在: 2年目で営業黒字化を達成。据置期間終了後の返済再開に向け、内部留保を積み増し中。

この事例のように、「時間を買う」ことができるのが、この制度の最大の本質なのです。


4.利用にあたっての注意点と費用感

良いことづくめに見える制度ですが、経営者として押さえておくべき「義務」と「コスト」があります。

定期的なモニタリング報告義務

経営サポート保証を利用すると、原則として四半期(3ヶ月)に一度、認定支援機関を通じて金融機関へ試算表と実施状況の報告が必要になります。

これを「面倒だ」と感じるか、「3ヶ月に一度、プロと経営会議をして軌道修正する機会」と捉えるかで、会社の将来は変わります。成功している企業の多くは、後者のスタンスです。

専門家への報酬と補助金活用

計画策定やモニタリングには、認定支援機関(税理士やコンサルタント)への報酬が発生します。

一般的には、着手金や計画策定料、成功報酬などで数十万円〜の費用がかかります。

しかし、国の「経営改善計画策定支援事業(405事業)」などの補助制度を併用することで、専門家費用の最大2/3(上限あり)を国が負担してくれるケースが多くあります。実質的な負担を抑えながら、プロの知見を活用することが可能です。


5.よくある質問(FAQ)

Q. 赤字や債務超過でも経営サポート保証は利用できますか?

A. はい、利用可能です。むしろ、そうした状況から脱却するための制度です。ただし、単に赤字を埋めるための資金ではなく、「どうすれば黒字化するか」という蓋然性の高い計画書が必要になります。

Q. 顧問税理士にお願いすれば対応してもらえますか?

A. 顧問税理士が「認定経営革新等支援機関」の資格を持っていれば可能です。ただし、税務申告業務と「銀行融資を通すための計画策定」は全く異なるスキルセットです。金融調整や再生実務に慣れている専門家かどうか、一度確認することをお勧めします。

Q. リスケジュール(条件変更)中でも利用できますか?

A. 可能です。既存のリスケ案件を、経営サポート保証を使って正常な保証付き融資に一本化し、あわせてニューマネー(真水)を調達する手法としても活用されています。


6.資金繰りの悩みは、早めの「手当て」が会社を救う

経営サポート保証は、中小企業にとって強力な武器ですが、魔法の杖ではありません。 「現金が底をつく寸前」になってからでは、計画書を作る時間も、審査を待つ時間もありません。

  • 返済負担が重く、本業に集中できていない
  • 半年後の資金繰りに不安がある
  • 銀行との交渉を有利に進めたい

もし一つでも当てはまるなら、まだ余力がある今のうちに動くことが肝要です。